※当ブログではアフィリエイト広告を利用しています。
技術の仕組みや舞台裏を知ることは個人的に好きなのですが、8月11日に発売された「アカマイ 知られざるインターネットの巨人」はアカマイというあまり知られていない会社の凄さを紹介しつつインターネットの裏側やネットワークの仕組みも学べる良書でした。
ゆっくり読んだので読了まで数日かかりましたが、やさしい文章で面白い内容でした。読んでよかった点をご紹介します。
書籍「アカマイ 知られざるインターネットの巨人」について
インターネットの全通信量の1/3を運んでいながら世間にはあまり知られていないアカマイという会社について、成り立ちや同社が提供するサービスをインターネットを支えている技術の解説も含めて紹介している書籍です。
目次は以下の通りで、最終章ではインターネットのこれからについても触れられています。
- 第1章 何をする会社なのか
- 第2章 それはMITから始まった
- 第3章 インターネットはどう動くか
- 第4章 アカマイの技術とインターネット
- 第5章 インターネットのカネと力
- 第6章 インターネットとアカマイのこれから
アカマイ(Akamai)について
世界最大のコンテンツデリバリネットワーク (CDN) 事業者で、他にも様々なネットワークサービスを手がけるアメリカの企業です。正式名称はアカマイ・テクノロジーズです。本書ではB2B(Business to Business)の企業で積極的な宣伝もしないため、世間にはあまり知られていない企業と書かれています。
実際私も「このサイトはどのレンタルサーバを使っているのかな」と調べたりしてたまに名前を見かけることがあった程度で気にも留めていない会社でした。私が普段見るサイトだとファッション系のECサイト(マルイ、株式会社ポイント)がAkamaiのサービスを使っているようです。
例としてマルイのオンラインショップ「voi」のアドレスvoi.0101.co.jp
から正引きしたIP184.28.157.144
を逆引きしてみるとa184-28-157-144.deploy.static.akamaitechnologies.com
というホスト名が返ってきます。
Geo IP Address Viewで見るとロケーションはアメリカになっていますが、実際にエンドユーザが見に行くキャッシュサーバは国内にあると思われます。日本国内からの同サイト表示速度は非常に速く、高品質なCDNであることがわかります。
筆者のあきみち(小川晃通)氏について
博士(政策メディア)かつ前職はSONYという経歴を持ち、現在は「Geekなぺーじ」というインターネットをテーマにしたブログを書かれている職業ブロガーの方です。ブログではネットワークやプログラミングなどの難しい技術をわかりやすく解説されていたり数多くのIT関連書籍の執筆や監訳にも携わっておられる等、多方面で活躍されています。
私は別の著書である「インターネットのカタチ – もろさが織り成す粘り強い世界 -」を偶然購入したことから同氏のことを知りました。本書と同じく平易な言葉でインターネットの仕組みが解説されている、ネットワークの入門書としておすすめしたい書籍です。
書籍「アカマイ 知られざるインターネットの巨人」の良かった点
本書の良かった点をご紹介します。
易しい文章でネットワークに詳しくない人、苦手な人でも読める
全体的に易しい文章で書かれており、ネットワークに詳しくなかったり苦手意識があっても苦なく読むことができます。例えばわかりやすいと思った表現には以下のようなものがありました。
- 小包(パケット)を道路標識をたよりに車で配送することで例えたルーティング
- ドラえもんの「どこでもドア」での移動に例えたTCPでの通信
- 先生が生徒からのよくある質問を手元に置いておくことに例えたキャッシュ
また重要な語句はページの下の方に別に解説が付いているため、読んでいるうちによくわからなくなるということもありませんでした。
引用元:アカマイ―知られざるインターネットの巨人 p123
アカマイのサービスやネットワーク関連技術のイメージがつかみやすい
アカマイのことを知る上では外せないネットワーク技術や、アカマイのサービスそのものを解説する図が豊富にあります。文章に図解がプラスされることでよりイメージがつかみやすかったです。
例として下の図はユーザがWebサイトを閲覧するときのDNSキャッシュサーバ問い合わせからWebサイトコンテンツ取得を説明したものです。
引用元:アカマイ―知られざるインターネットの巨人 p104
アカマイの配信パフォーマンス向上技術「SureRoute」やキャッシュサーバの多段化「Tiered Distribution」のほか、各サービスについても図解での説明があります。
インターネットの裏側を知ることができる
第5章「インターネットのカネと力」ではAS(Autonomous System)間接続において、トラフィック(情報量)がそのままお金や力関係につながるという話が出てきました。
またAS間のトラフィックを減らせることからISPには強く出られるアカマイが、近年では安価で高品質なCDNサービス事業者(Amazon CloudFrontやCloudFlareなどを指すと思われます)が多く出てきたこともあり、顧客には弱いと考えられるという「強くて弱いアカマイ」というお話も出てきます。
裏側の力関係のようなものを垣間見ることで、いろいろな想像を働かせることができました。
おわりに
主なテーマはアカマイについてでしたが、それ以前のネットワーク技術を知る上でも有用な書籍でした。
また最終章の「インターネットはどこへ行くのか」にあった、IT系の技術者であってもインターネットの構造に興味を持たない人が多いように見受けられるという一文には少し考えさせられるものがありました。本書を読むことでモノの裏側を知ることの大事さも再認識できたと思います。